ある晴れの日
なんとか出来上がった看板のお陰で、お客さんも少しずつ増えてきました。
でも何だか気になることもあるのです。
この前、店の外にいる黒縁のメガネさんと目が合ったのだけど、すぐにいなくなってしまったし、
今日も可愛いお団子頭の女の子が看板を見てくれていたのに、目が合ったらやっぱりすぐにいなくなってしまった。わたし、もしかして目つきが悪いのかしら。
― いつもの、もうらおうかな。
なんだ、コトブキさんか。いらっしゃい。
― なんだ、とは随分じゃないか。
あら、ごめんなさい。違うの、本当にそう思っている訳ではないのよ。
そう弁明しながら、いつもの豆を挽く。
最近、お客さんは少し増えたのだけど、気になる人たちがいてね。
お店のことは気にしてくれているようなんだけど、目が合うとすぐにどこかに行ってしまうのよね。
せめて挨拶くらいしたいし、お店にだって気軽に入ってほしいのに・・・はい、おまたせしました。
ー ふー、ふー。ふー。ゴクゴク。
わたし、怖がらせてしまっているのかしら。
どちらかというと、人の良いおっとり顔だと自分では思っていたのだけど、自意識過剰かしら。
なんだか自信がなくなってしまう…。メガネさんとも、お団子ちゃんとも、気軽にお話ししたいのに。
ー おそらく、そのメガネもお団子も、優しい人たちなんだろうな
え?まぁ、人のよさそうな感じだったけど、話したことはないから分からないわ。
ー 店に興味があり、看板を見たい。
だが、看板をじっくり見たうえで入らなかったら、君をがっかりさせる、そう思っているのだろう。
だから、店にも看板にも、興味をみせつつも近づかないのだ
私に気を使っているってこと?そんなの別にいいのに・・・
ー だから、優しい人たちだと言っただろう。
それなのに君ときたら、ここからもよく見えるような、入口に看板を置いて 。
え?看板って普通、入口の前に置くものだと思っていたけど・・・
そっか、後押しするための看板も、店内からよく見えちゃうところに置いていたら、逆に見づらいのね。
たしかに、わたしも店内からじろじろ見られたら、気を使っちゃう!
よし、店内から見づらい場所に、移動させてみよう。
ー 可愛いお団子ちゃんとやらに会えるのを楽しみにしている
そう言って、コトブキさんは出ていきました。
ついでに看板移動させてから帰ってくれないかしら。
コトブキさんは今日もスマートに去っていきましたね。
メガネさん達の気持ち、分かる方も多いのではないでしょうか? 私はよく分かります!
たまに、お店の前の看板の横に店員さんが立っている時があるのですが、そんな事されたら目線すらお店に向けられないほどの小心者でございます。
そんな私達のためにも、看板やメニューは、じっくり見られる場所に置いていただけると嬉しいですね。
さて、看板を店内から見難いところに移動させたナンシー。
メガネさんとお団子ちゃんは来てくれるのでしょうか?
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